「実習に行きたくない。」
「毎日怒られるのが怖い。」
「自分だけ何もできない気がする。」
「もう歯科衛生士を辞めたい。」
歯科衛生士を目指す学生にとって、
実習は大きな壁になることがあります。
学校で勉強しているときには、
歯科衛生士になりたいと思っていた。
でも、
実際の現場に出てみたら、
想像していたよりずっとつらかった。
そんな人もいると思います。
そして、
実習がうまくいかないと、
こんなふうに考えてしまうことがあります。
「私は歯科衛生士に向いていないのかもしれない。」
でも、
私はここを、
少し分けて考えてほしいと思っています。
実習がつらいことと、
歯科衛生士に向いていないことは、
同じではありません。
実習は「できない状態」で現場に入る
そもそも、
実習に行く学生は、
まだ歯科衛生士ではありません。
学校で習ったことはあっても、
実際の患者さんを前にすると、
思うように動けないことがあります。
学校ではできたのに、
現場ではできない。
何をすればいいか分からない。
言われたことを忘れる。
緊張して動けなくなる。
専門用語がすぐ出てこない。
これは、
珍しいことではありません。
知識として知っていることと、
現場で使えることは違います。
実習は、
その間をつなぐための経験でもあります。
「実習がつらい」の中身は、人によって違います
ここが、
一番考えてほしいところです。
同じ、
「実習がつらい」
でも、
中身は同じではありません。
例えば、
知識が足りなくてつらい
質問されても答えられない。
処置の流れが分からない。
器具の名前が出てこない。
これは、
知識や事前準備の問題かもしれません。
技術がうまくできなくてつらい
学校では練習したけれど、
実際の現場では思うようにできない。
これは、
経験や練習によって変わる可能性があります。
人間関係がつらい
指導者が怖い。
質問しづらい。
スタッフとの関わりが苦しい。
これは、
知識や技術とは別の問題です。
緊張や疲労でつらい
毎日気を張っている。
帰宅すると何もできない。
翌日の実習を考えるだけで憂うつになる。
これも、
単純に「勉強不足」だけでは説明できません。
だから「向いていない」で全部まとめない
実習がつらいと、
「私には向いていない」
という言葉が出てくることがあります。
でも、
この言葉は、
いろいろな問題を一つにまとめてしまいます。
知識が足りない。
技術がまだ身についていない。
緊張している。
指導者との関係がうまくいかない。
生活そのものが疲れている。
歯科衛生士という仕事に興味を持てなくなった。
これらは、
それぞれ違う問題です。
だから、
「向いていないかどうか」を考える前に、
何が一番つらいのか
を確認してほしいと思います。
指導された=歯科衛生士としてダメ、ではありません
実習では、
指導を受けることがあります。
間違いを指摘される。
やり直す。
注意される。
学生にとっては、
かなり落ち込むこともあります。
特に、
周りの学生がうまくできているように見えると、
「自分だけできない」
と感じやすくなります。
でも、
指摘されたことと、
歯科衛生士として向いていないことは、
別です。
大切なのは、
何を指摘されたのか。
なぜそうなったのか。
次に何を変えるのか。
そこです。
ただし、「全部自分が悪い」と考える必要もありません
実習では、
学生側に改善すべきことがある場合もあります。
準備不足だった。
同じ注意を何度も繰り返した。
必要な確認をしなかった。
そういうことは、
修正する必要があります。
でも、
実習で起きるすべての問題を、
「自分ができないから」
と考える必要もありません。
指導の仕方。
実習先との相性。
コミュニケーション。
実習環境。
いろいろな要因があります。
だから、
感情だけで、
「私が全部悪い」
「先生が全部悪い」
のどちらかに決めるのではなく、
何が起きているのかを具体的に見ること
が大切です。
「怒られないこと」を目標にしない
実習が怖くなると、
一日の目標が、
「今日は怒られませんように」
になることがあります。
そうなると、
指示されたことだけをやる。
質問しない。
分からなくても黙る。
できるだけ目立たないようにする。
そんな状態になってしまうことがあります。
でも、
実習は、
怒られないために行く場所ではありません。
分からないことを確認する。
昨日できなかったことを、
今日は一つできるようにする。
患者さんを見る。
処置の流れを見る。
歯科衛生士が何を考えて動いているのかを見る。
小さくても、
昨日の自分から何が変わったか
を見る方が大切です。
実習記録に追われて、学ぶ余裕がなくなることもある
実習中は、
記録や課題に時間を取られることがあります。
帰宅してから、
記録を書く。
調べる。
翌日の準備をする。
気づけば寝る時間。
そして、
翌朝また実習。
そんな生活になると、
「何のために実習しているんだろう」
と思うこともあるかもしれません。
記録を終わらせることだけが目的になってしまうと、
実際に何を学んだのかが見えにくくなります。
忙しいときほど、
一つだけでもいいので、
「今日分からなかったことは何だったか」
を残しておくと、
実習がただ消耗する時間になりにくくなります。
「歯科衛生士を辞めたい」のか、「実習から逃げたい」のか
実習が本当につらいとき、
「もう学校を辞めたい」
と思うこともあると思います。
その気持ち自体を、
無理に否定する必要はありません。
でも、
大きな決断をする前に、
一度分けて考えてほしいことがあります。
歯科衛生士という仕事をしたくないのか。
それとも、
今の実習がつらくて、ここから離れたいのか。
これは、
同じではありません。
もちろん、
考えた結果、
進路を変えることもあると思います。
ただ、
「今つらい」という状態だけで、
自分の将来全部を判断しなくてもいいと思います。
実習で困っているなら、一人で抱え込まない
実習中の問題は、
自分だけで解決できないこともあります。
学校の先生。
実習担当者。
信頼できる教員。
必要であれば、
相談してください。
特に、
実習そのものが続けられないほど困っている場合や、
指導の範囲を超えているのではないかと感じることがある場合は、
「自分が弱いから」
で終わらせず、
学校側に状況を伝えることも必要です。
相談することは、
実習から逃げることではありません。
状況を整理するための行動です。
実習でつまずいた経験が、後で役立つこともあります
私は、
歯科医院だけでなく、
行政や教育など、
さまざまな場所で歯科衛生士として働いてきました。
そして、
歯科衛生士の育成にも関わってきました。
その中で思うのは、
最初から何でもできた人だけが、
その後活躍するわけではないということです。
できなかった。
注意された。
分からなかった。
だから、
調べた。
練習した。
考えた。
そういう経験が、
後になって、
人に教えるときに役立つこともあります。
「できなかった経験」は、
それだけで失敗とは限りません。
国家試験を教えていても、同じことを感じます
現在、
私は歯科衛生士国家試験を目指す学生を支援しています。
国家試験でも、
似たことがあります。
「私は勉強ができない。」
「向いていない。」
そう思っている学生でも、
詳しく見てみると、
知識がないのではなく、
問題文の意味を読み取れていなかったり、
覚え方が合っていなかったり、
優先順位がずれていたりすることがあります。
大きな言葉で自分を評価する前に、
何が起きているのかを見る。
これは、
実習でも、
国家試験でも、
大切なことだと思っています。
保護者の方へ|「せっかく入ったんだから頑張りなさい」の前に
お子さんから、
「実習がつらい」
「学校を辞めたい」
と言われたら、
保護者の方も戸惑うと思います。
せっかくここまで来た。
学費も払っている。
資格を取った方がいい。
そう考えるのも自然です。
でも、
最初から、
「とにかく頑張りなさい」
で終わらせないでほしいと思います。
何がつらいのか。
知識なのか。
技術なのか。
人間関係なのか。
実習環境なのか。
それとも、
本当に歯科衛生士になりたくないのか。
まず、
そこを聞いてみてください。
続けるかどうかを考えるのは、
その後でも遅くありません。
実習がつらいあなたへ
実習に行きたくない朝がある。
失敗して、
帰り道で泣きたくなる日もある。
周りができているように見えて、
自分だけ取り残されたように感じることもあるかもしれません。
でも、
今うまくできないことだけで、
歯科衛生士としての将来全部を決める必要はありません。
一方で、
「みんなつらいから我慢すればいい」
とも思いません。
つらいなら、
何がつらいのかを見る。
変えられることなのか。
助けを求める必要があるのか。
それとも、
進路そのものを考え直したいのか。
「実習がつらい」の先にあるものを、一度分けて考えてみてください。
それから判断しても、
遅くありません。
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書いた人

都谷森うらら
歯科衛生士国家試験専門・パーソナル伴走型サポート「はぐもぐ」代表。
2014年に歯科衛生士資格を取得。歯科医院での臨床、行政の保健センター、歯科衛生士の教育・育成、マネジメントなどを経験。
現在は、歯科衛生士国家試験を目指す受験生の学習設計・判断・伴走を行っています。



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