「私って、歯科衛生士に向いていると思いますか?」
学生さんから、
こんな相談を受けることがあります。
実習がうまくいかなかった。
手先が器用ではない。
人と話すのが得意ではない。
テストの点数が悪かった。
そんなことがあると、
「自分は歯科衛生士に向いていないのかも」
と思ってしまうことがあります。
では、
どんな人なら歯科衛生士に向いているのでしょうか。
私は2014年に歯科衛生士の資格を取得し、
歯科医院、行政、教育、歯科衛生士の育成など、
さまざまな立場から歯科衛生士を見てきました。
その経験から思うのは、
「○○が苦手だから向いていない」と、それほど簡単には決められない
ということです。
「手先が器用じゃないと無理」は本当?
歯科衛生士というと、
細かな器具を使って、
口の中で処置をする仕事をイメージすると思います。
確かに、
細かな作業はあります。
そのため、
「不器用だから歯科衛生士は無理かも」
と心配する学生さんもいます。
でも、
学校に入った時点から、
すべての技術ができる人である必要はありません。
器具の持ち方。
姿勢。
ミラーの使い方。
スケーリング。
印象採得。
さまざまな技術を、
学校や臨床で練習して身につけていきます。
最初からできるかではなく、
できないことを練習して修正できるか。
こちらの方が、
私は重要だと思っています。
コミュニケーションが得意じゃないとダメ?
歯科衛生士は、
人と関わる仕事です。
患者さんへの説明。
問診。
セルフケアの指導。
歯科医師や他のスタッフとの連携。
コミュニケーションは避けられません。
でも、
「話すのが得意=コミュニケーション能力が高い」
とも限りません。
たくさん話すことより、
患者さんの話を聞くことが大切な場面もあります。
相手の表情を見る。
困っていることを聞く。
理解できているか確認する。
必要なことを分かりやすく伝える。
こうした力も、
コミュニケーションです。
「私は人見知りだから向いていない」
と、
それだけで決める必要はないと思います。
勉強が苦手なら、歯科衛生士には向いていない?
これは、
国家試験を目指す学生を見ている私が、
特に伝えたいところです。
歯科衛生士になるには、
勉強が必要です。
そして、
国家試験にも合格しなければなりません。
だから、
「勉強なんてできなくても大丈夫」
とは言えません。
でも、
今テストの点数が低いことと、
歯科衛生士として働く適性は、
まったく同じものではありません。
勉強についていけないのであれば、
まず見るべきなのは、
「向いていないかどうか」ではなく、
なぜ、今の勉強がうまくいっていないのか
です。
覚え方なのか。
理解なのか。
勉強量なのか。
問題文を読む力なのか。
優先順位なのか。
原因によって、
必要な対応は変わります。
むしろ大切だと思うのは「分からないままにしないこと」
歯科衛生士は、
資格を取ったら勉強が終わる仕事ではありません。
患者さんによって、
口腔内の状態も違います。
持っている病気も違います。
服用している薬も違います。
新しい知識が必要になることもあります。
そんなとき、
分からないことを、
「まあいいか」
で終わらせないこと。
調べる。
聞く。
確認する。
必要なら、
やり方を変える。
私は、
こうした姿勢の方が、
最初から何でもできることより大切だと思っています。
「人の変化を見ること」が好きな人には面白い仕事だと思う
歯科衛生士の仕事では、
同じ患者さんと継続的に関わることがあります。
最初は磨けていなかったところが、
少しずつ磨けるようになる。
口腔内の状態が変わる。
患者さん自身の意識が変わる。
私は、
こういう変化を見ることに、
歯科衛生士の仕事の面白さがあると思っています。
人に何かを一方的に「してあげる」というより、
その人が変わっていく過程に関わる。
そういうことが好きな人には、
やりがいを感じやすい仕事かもしれません。
丁寧さは大切。でも「完璧な人」である必要はありません
歯科衛生士は、
医療に関わる仕事です。
そのため、
「だいたいでいい」
では困る場面があります。
確認すること。
記録すること。
感染対策を守ること。
必要な報告をすること。
こうした丁寧さは重要です。
一方で、
何でも最初から完璧にできる人でなければならない、
という意味ではありません。
間違えたときに確認する。
指摘されたことを修正する。
同じことを繰り返さないために考える。
仕事を始めてから身につくものも、
たくさんあります。
「歯科医院が合わない=歯科衛生士が向いていない」でもありません
もう一つ、
知っておいてほしいことがあります。
歯科衛生士の働く場所は、
歯科医院だけではありません。
私は歯科医院で働いたあと、
行政の保健センターでも働きました。
その後は、
歯科衛生士の教育や育成、
マネジメントにも関わってきました。
現在は、
国家試験を目指す受験生の支援をしています。
同じ資格でも、
働く場所によって求められるものは変わります。
臨床が好きな人。
子どもへの健康教育が得意な人。
高齢者との関わりが好きな人。
人を育てることが好きな人。
組織を整えることが得意な人。
いろいろな歯科衛生士がいます。
だから、
一つの実習や一つの職場だけで、
歯科衛生士という仕事全体への適性を決めるのは、
少し早いと思います。
では「向いていない人」はいないの?
もちろん、
誰にでも向いている仕事だとは思いません。
例えば、
医療職として必要な確認をすること自体を面倒だと感じる。
分からないことがあっても確認したくない。
患者さんの安全より、
自分の都合を優先してしまう。
学び続けることを一切したくない。
そうした状態のままであれば、
医療職として働くことは難しいでしょう。
ただ、
これは、
「人見知りだから」
「不器用だから」
「テストの点数が悪いから」
とは、
少し違う話です。
学生の今だけで、完成形を求めなくていい
実習に行って、
うまくできなかった。
先生に注意された。
テストで点数が取れなかった。
周りより遅かった。
学生生活では、
自信をなくす場面もあります。
でも、
学生は、
歯科衛生士になる途中です。
まだできないことがあるのは、
当然です。
大切なのは、
できなかったときに、
「私は向いていない」で終わらせるのか、
「何ができなかったんだろう」と考えるのか。
ここには、
大きな違いがあります。
保護者の方へ|一つの成績だけで「向いていない」と決めないでほしい
お子さんが、
「私、歯科衛生士向いてないかも」
と言ってきたら、
保護者の方も心配になると思います。
そんなとき、
すぐに、
「そんなことないよ」
と励ます必要も、
「じゃあ辞めたら?」
と結論を出す必要もありません。
まず、
何があったのかを聞いてみてください。
テストなのか。
実習なのか。
人間関係なのか。
勉強についていけないのか。
歯科衛生士という仕事自体に興味を失ったのか。
同じ「向いていない」でも、
中身はまったく違います。
原因が違えば、
考えることも変わります。
「向いているか」より、「今、何につまずいているか」
私は、
歯科衛生士国家試験を目指す学生と関わるときにも、
「この子は頭がいい」
「この子は勉強が苦手」
だけで見ないようにしています。
できないのであれば、
どこで止まっているのか。
理解なのか。
記憶なのか。
問題文なのか。
勉強方法なのか。
判断なのか。
それを見ます。
「向いていない」
という言葉は、
いろいろな問題を一つにまとめてしまいます。
だから、
その言葉で自分の可能性を決める前に、
もう少し細かく見てほしいと思います。
最後に
歯科衛生士に向いている人は、
どんな人でしょうか。
人と話すのが得意な人。
手先が器用な人。
勉強ができる人。
もちろん、
それらが役立つ場面はあります。
でも、
10年以上歯科衛生士として働き、
さまざまな歯科衛生士や学生を見てきた私は、
それだけでは決められないと思っています。
分からないことを確認する。
できなかったことを修正する。
人の話を聞く。
必要なことを学び続ける。
そして、
少しずつできることを増やしていく。
最初から、
完成した歯科衛生士である必要はありません。
今何かにつまずいているなら、
「向いていないのかな」
と結論を出す前に、
何につまずいているのか。
まず、
そこから考えてみてください。
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書いた人

都谷森うらら
歯科衛生士国家試験専門・パーソナル伴走型サポート「はぐもぐ」代表。
2014年に歯科衛生士資格を取得。歯科医院での臨床、行政の保健センター、歯科衛生士の教育・育成、マネジメントなどを経験。現在は、歯科衛生士国家試験を目指す受験生の学習設計・判断・伴走を行っています。



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