「歯科衛生士になって、よかったですか?」
もし学生さんからそう聞かれたら、
私は、
「私は、なってよかったと思っています」
と答えます。
ただし、
「歯科衛生士は素晴らしい仕事だから、みんなにおすすめです」
とは言いません。
私は2014年に歯科衛生士の資格を取得しました。
そこから10年以上。
歯科医院での臨床、
行政の保健センター、
歯科衛生士の教育やマネジメント、
国家試験を目指す学生への指導など、
いろいろな立場から歯科衛生士という仕事を見てきました。
もちろん、
楽しいことばかりではありませんでした。
それでも、
振り返ってみると、
歯科衛生士の資格を取ったことは、私の人生の選択肢を広げてくれた
と思っています。
今日は、
歯科衛生士国家試験の勉強から少し離れて、
私が10年以上働いてきて感じている、
歯科衛生士のやりがいと現実について書いてみます。
- 歯科衛生士は「人の役に立てる仕事」なのか
- 国家試験で勉強したことが「人を見る知識」に変わっていく
- 一方で、歯科衛生士は「楽な仕事」ではありません
- 「資格を取れば一生安泰」とも言いません
- それでも、国家資格を持っていることは私を助けてくれました
- 「歯科衛生士+何か」という働き方もできる
- 私が一番やりがいを感じる瞬間
- だから「歯科衛生士になってよかった」と思う
- でも、すべての人に歯科衛生士をすすめたいわけではありません
- 国家試験がつらくて「歯科衛生士になりたくない」と思っている人へ
- 保護者の方へ|「せっかくここまで来たんだから」だけにしないでほしい
- 国家試験は、歯科衛生士人生のほんの入口です
- 最後に
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- 書いた人
歯科衛生士は「人の役に立てる仕事」なのか
歯科衛生士のやりがいを調べると、
「患者さんからありがとうと言ってもらえる」
という話がよく出てきます。
これは確かにあります。
でも、
私が感じるやりがいは、
もう少し具体的なものです。
例えば、
最初は歯磨きがうまくできなかった患者さんの口腔内が、
少しずつ変わっていく。
歯周病の状態が改善していく。
自分の説明をきっかけに、
患者さん自身の行動が変わる。
これは、
単に「感謝されたから嬉しい」とは少し違います。
自分の知識や技術によって、人の健康に変化が起こる。
そこに、
専門職としての面白さがあると思っています。
国家試験で勉強したことが「人を見る知識」に変わっていく
学生の頃は、
国家試験のために本当にたくさんのことを覚えます。
解剖学。
生理学。
病理学。
歯周病。
う蝕。
公衆衛生。
高齢者。
全身疾患。
薬。
法律。
勉強している最中は、
「こんなことまで覚える必要ある?」
と思うこともあるかもしれません。
でも、
歯科衛生士として働き始めると、
それまで別々だった知識が、
一人の患者さんの中でつながっていきます。
なぜ、この人はこういう状態なのか。
どんなリスクがあるのか。
何を伝える必要があるのか。
どこまで自分が対応し、
どこから歯科医師につなぐのか。
国家試験のために覚えていた知識が、
目の前の人を判断するための知識になる。
私はここに、
専門職として働く面白さがあると思っています。
一方で、歯科衛生士は「楽な仕事」ではありません
ここは、
これから歯科衛生士になる学生さんにも、
保護者の方にも、
きちんと伝えておきたいところです。
歯科衛生士は、
決して楽な仕事ではありません。
一日中、
患者さんと関わります。
細かい作業も多いです。
姿勢によっては、
身体への負担を感じることもあります。
時間通りに診療を進めなければならない場面もあります。
そして何より、
人を相手にする仕事です。
患者さんとのコミュニケーションだけでなく、
歯科医師、
歯科衛生士、
歯科助手、
受付など、
さまざまな人と一緒に働きます。
技術だけあれば、
すべてうまくいく仕事ではありません。
「資格を取れば一生安泰」とも言いません
国家資格だから安心。
歯科衛生士ならどこでも働ける。
そんな言葉を聞くこともあります。
私は、
そこまで単純ではないと思っています。
同じ歯科衛生士でも、
職場によって仕事内容は違います。
求められる技術も違います。
給与や待遇、
休日、
教育体制、
人間関係、
仕事の進め方も違います。
「歯科衛生士になれば、どんな職場でも幸せに働ける」
わけではありません。
自分に合う職場を探すことも必要です。
働きながら、
技術や知識を身につけていくことも必要です。
資格は、
人生を自動的に安定させてくれるものではありません。
それでも、国家資格を持っていることは私を助けてくれました
ここまで読むと、
「じゃあ、何がそんなによかったの?」
と思うかもしれません。
私にとって大きかったのは、
歯科衛生士という専門性を持った状態で、次の選択肢を考えられたこと
です。
私は最初、
歯科医院で働きました。
その後、
行政の保健センターでも働きました。
そこでは、
臨床とは違う形で地域の健康に関わりました。
さらに、
歯科衛生士の教育やマネジメントにも関わるようになりました。
そして現在は、
歯科衛生士国家試験を目指す受験生の支援をしています。
歯科医院を離れたら、
歯科衛生士としての経験がゼロになったわけではありません。
むしろ、
それまでの経験を持ったまま、
次の仕事へ進むことができました。
「歯科衛生士+何か」という働き方もできる
私は歯科衛生士として働いたあと、
日本福祉大学の医療福祉経営学部でも学びました。
歯科衛生士になったからといって、
その後ずっと歯科だけを勉強しなければならないわけではありません。
歯科衛生士としての経験に、
別の知識や経験を重ねていくこともできます。
私の場合は、
臨床、
行政、
教育、
マネジメント、
医療福祉経営、
そして事業運営。
少しずつ経験が重なって、
今の仕事につながっています。
歯科衛生士になることは、
自分の職業人生を決めてしまうことではありません。
私にとってはむしろ、
自分のキャリアをつくっていくための土台の一つになりました。
私が一番やりがいを感じる瞬間
歯科医院で働いていた頃と、
現在では仕事内容が大きく違います。
でも、
共通して好きなことがあります。
それは、
「できなかったことが、できるようになる過程を見ること」
です。
患者さんの口腔内が変わる。
セルフケアが変わる。
新人の歯科衛生士ができることを増やしていく。
国家試験の受験生が、
今まで分からなかったことを理解できるようになる。
勉強が続かなかった人が、
自分で机に向かえるようになる。
私は、
完成した結果だけを見るより、
そこまでの変化に関わることが好きなのだと思います。
今の「はぐもぐ」という仕事も、
その延長線上にあります。
だから「歯科衛生士になってよかった」と思う
私は、
ずっと同じ歯科医院で働いてきたわけではありません。
働く場所も、
仕事内容も、
少しずつ変わってきました。
それでも、
すべてのスタートには、
歯科衛生士という資格があります。
もし歯科衛生士になっていなかったら、
出会わなかった人がたくさんいます。
経験しなかった仕事もあります。
そして、
今の「はぐもぐ」も、
おそらくありません。
だから私は、
歯科衛生士になってよかったと思っています。
でも、すべての人に歯科衛生士をすすめたいわけではありません
ここも、
誤解してほしくありません。
歯科衛生士にも、
向き不向きがあります。
人と関わること。
細かな作業をすること。
医療職として責任を持つこと。
知識や技術を学び続けること。
そうしたことが求められる仕事です。
実際に働いてみて、
「自分には違ったかもしれない」
と思う人がいることも、
不思議ではありません。
だから、
「国家資格なんだから絶対取った方がいい」
と私は言いません。
国家試験がつらくて「歯科衛生士になりたくない」と思っている人へ
ただ、
一つだけ分けて考えてほしいことがあります。
歯科衛生士になりたくないのか。
それとも、
今、国家試験の勉強がつらいのか。
これは、
同じではありません。
模試の点数が上がらない。
覚えても忘れる。
周りと比べて焦る。
卒業試験もある。
国家試験も近づいてくる。
そういう状態になると、
「もう歯科衛生士なんてなりたくない」
と思うこともあります。
でも、
勉強が苦しいことと、
その仕事が自分に合わないことは、
分けて考えた方がいいと思います。
保護者の方へ|「せっかくここまで来たんだから」だけにしないでほしい
お子さんが、
「もう歯科衛生士になりたくない」
と言ったら、
保護者の方も不安になると思います。
ここまで学校に通った。
学費も払った。
国家試験まであと少し。
だから、
「せっかくここまで来たんだから頑張りなさい」
と言いたくなるかもしれません。
でも、
一度、
何がつらいのかを分けてみてほしい
と思います。
歯科衛生士という仕事そのものが嫌なのか。
国家試験への不安なのか。
勉強しても結果が出ないことが苦しいのか。
何をすればいいか分からなくなっているのか。
原因によって、
必要な支え方は変わります。
「やる気」の問題にしてしまう前に、
今何が起きているのかを見る。
これは、
国家試験の勉強でも同じです。
国家試験は、歯科衛生士人生のほんの入口です
国家試験の直前になると、
180問の試験が、
人生のすべてのように感じることがあります。
でも、
歯科衛生士になって10年以上経った今から振り返ると、
国家試験は、
歯科衛生士として働くための入口でした。
その先の方が、
ずっと長いです。
どんな職場を選ぶのか。
何を得意にするのか。
どんな人と働くのか。
途中で何を学ぶのか。
働き方を変えるのか。
学生の今、
全部決まっている必要はありません。
最後に
「歯科衛生士になってよかったですか?」
私の答えは、
はい。
でも、
それは、
歯科衛生士という仕事がいつも楽しかったからでも、
資格を取れば人生が安泰だったからでもありません。
歯科衛生士という専門性を持ったことで、
人に関わり、
経験を積み、
そこから次の選択肢をつくることができたからです。
今、
国家試験の勉強が苦しくて、
その先が見えなくなっている人もいると思います。
そんなときは、
目の前の模試の点数だけではなく、
少しだけ、
その先の自分について考えてみてください。
国家試験に合格した瞬間に、
将来を決める必要はありません。
まず、
歯科衛生士という選択肢を自分の手に持つ。
そこから、
自分なりの働き方を探していくこともできます。
私はそうやって、
今まで歩いてきました。
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書いた人

都谷森うらら
歯科衛生士国家試験専門・パーソナル伴走型サポート「はぐもぐ」代表。
2014年に歯科衛生士資格を取得。歯科医院での臨床、行政の保健センター、歯科衛生士の教育・育成、マネジメントなどを経験。日本福祉大学 医療福祉経営学部卒業。
現在は、これまでの歯科衛生士としての経験と国家試験指導の経験を生かし、歯科衛生士国家試験を目指す受験生の学習設計・判断・伴走を行っています。


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